金沢競馬で冠レース(個人協賛競走)を実施した話 (2021年4月時点)
競馬や競輪、競艇、オートレースなど公営競技には「個人協賛競走」という概念がある。要はレース名のネーミングライツで、地方競馬などでは個人でもこれを購入(協賛)できる。 個人協賛競走自体は十数年前から実施されており、アニメファンなどによる「痛レース」でも知られている。 この仕組みの詳細については解説サイトが多数あるのでそちらをご覧いただきたい。
今回は金沢競馬で冠レースを実施させていただいた際の記録である。
実施したレースと動機
JA1YCG アマチュア無線応援杯(2021年5月2日、金沢競馬)
JA1YCGというのは私が所属している(半ばOBだが)アマチュア無線の大学社団局である。
どうやら新入生が入らないらしく、何か知名度を上げる方法はないかと模索し、有志で今回のレースを実施した(なお、効果は……)。
後述するが、競馬場によっては1万円+諸経費で協賛レースを実施できる。思っていたよりもかなり安価である。
冠レースを実施するとどうなるのか?
- 競馬場でレース名が掲示され、実況でレース開始時に読み上げられる
- 一部の競馬新聞にレース名が記載される
- 競馬データベースサイトに掲載され、ずっと残る
競馬場の選定
個人協賛競走は各競馬場が独自に実施しているもので、料金、申し込み方法、文字数など競馬場によって制度が大きく異なる。 文字数や費用についてはBTNRさんの記事が参考になったのでこれを一読することをおすすめする。
文字数や料金以外の面もいくつか差がある。例えば……
- 高知競馬場(協賛レースの例)
- 名物アナウンサーが「協賛理由」を読んでくれる
- 発馬機の上の液晶画面にレース名が表示される
- 金沢競馬場
- YouTube公式中継や、現地のディスプレイに事前提出した画像を表示してくれる
- 協賛理由の読み上げ・表示はない
- 帯広ばんえい競馬(協賛レースの例)
- ネットから協賛をかんたんに申し込める(オンラインでほぼ完結)
- 中継で協賛理由の読み上げあり
などである。 レース中の様子は各競馬場で実施された冠レースを見るとわかるので、事前に「○○競馬場 冠レース」などで動画投稿サイトを検索してみるのもよいだろう。
また、記念日などに実施したい場合は各競馬場のレース開催日にも注意が必要である。概ね新年度になる頃には、各競馬場でその年のレース開催日が決まっている……ように思われる。
今回はレース名の文字数が多かったことから金沢競馬場を選定した。
以下の内容は2021年春時点のものであり、変更される可能性があるので、実際に申し込む場合は十分注意されたい。
金沢競馬の申し込み手続き(申込書)
最新の申込み要項は以下の公式サイトで確認できるので、申込みの際は直接確認されたい。 冠レース募集 | 金沢競馬 Official Website -KANAZAWA Horse park-
金沢競馬の場合、基本的には郵送である。郵送といっても公式サイトに用意されている申込書(PDF)を埋めるだけでよい。 とはいえ、初見だと戸惑うところがあるので、金沢競馬場に電話で質問した際の回答などを含め、以下に補足事項を示すので参考にしていただきたい。 (ただし、時期によって申込手順などが変わっている事はありうるので、必ず公式サイトの記載を優先していただきたい)
希望レース日・希望レース番号
レース番号は希望がある場合は記入すればよいが、「とにかくこの日に冠レースを実施できればそれでいい」など、特に希望がない場合は「希望なし」と記入すればいいとのこと。 今回は希望しなかったところ、第7レースとなった。
今回は日付は記入したが、こちらは空欄にできるかどうかは分からない。最低でも日付は希望しておいたがスムーズな気がする。
冠レース名称
今回は以下のように記入した。
ただし、少なくとも金沢競馬は公式サイトの「冠レース募集要項」には2021年時点で以下のような記載があるので注意が必要である。 要は、商標や著作権、著名人の名前などが関わる「痛レース」を(無断で)実施するのは不可能とのことであろう。
実際、今回も電話で「JA1YCGというのは何を示すものでしょうか?権利的にレース名に使用してもOKですか?」と確認があった。今回は「私たちが所属しているサークルの"無線局"としての符号で、無線界におけるアドレスのようなもの。特に商標や権利などは発生していない」旨を返答した。 紛らわしいものについては、申し込みの段階でレース名に使用しても問題ないことを示す書類か何かを同封しておくとトラブルが減るかもしれない。
なお、競馬情報サイトの大手である netkeiba.com では、以下のようにレース名が10文字に省略されて表示されることがある。そのため、「ネットで映えたい」ようなケースでは、アピールしたい要素(団体名・人名)を先頭から10文字までの間に入れておくと良いだろう。
また、当日の中継や競馬場のオッズ画面で示されるレース名も先頭6文字までしか表示されないので、併せて要注意である。
副賞について・副賞の提供方法
ちょっと分かりづらいが、金沢競馬の場合は事実上「副賞=協賛料金」である。 騎手への副賞となる商品券を協賛者が自分で購入し、それがそのまま騎手に渡されるという仕組みになっている。
金額は個人の場合2021年時点で1万円分である。最新の情報は公式サイトで確認されたい。
申込書には提供方法を記入する欄があるが、基本的には郵送でよいと思う(筆者は簡易書留で、VJAギフトカードを送った)。 規定上は「競走の前日までに到着」となっているが、申し込み書類に同封して早めに到着させても問題ないのではないかと思う。
来場について
申込書にはレース当日の来場有無を問う欄がある。来場せず、遠隔から中継を見守るというスタイルも問題ないようだ。
また、「あり」に記入したからといって、必ず来訪しなければならない訳ではないとのこと(ただし、副賞当日持参の場合は必須となるだろう)。
私は「来場あり」と記載しつつも、新型コロナウイルス感染症の拡大状況によっては取りやめるつもりだがどうすればよいか判断を仰いだところ、「来訪を中止する場合は連絡不要」との答えを頂いた。(実際、申込後に緊急事態宣言が発令されたことや、大学の活動制限が解除されなかったことにより、残念ながら来訪を中止した。)
ただ、逆に「来訪なし」から変更するのは大変だと思うので、「状況次第では行きたい」程度でも「あり」にしておく方がよいだろう。
色紙・レース映像について
申込書で「勝利騎手サイン色紙」や「レース映像」を希望すると、1着となった騎手のサイン色紙やレースの映像を記録したDVD/ブルーレイを送付してもらえる。自分の場合、レース終了から約1週間程度で届いた。 追加費用は不要なので、記念品が欲しい場合は希望しておくとよいだろう。
大型映像装置へのメッセージ・画像
ここはやや分かりづらいところで、確認の電話を入れた。
基本的には「大型映像装置へのメッセージ掲載」に記入した文字を、「大型映像装置への画像掲載」で添付した画像の上に重ねて(加工して)表示してくれるとのことである。画像編集の手段を持たない場合はそれが楽であろう。
だが、自分で画像編集ができる場合、メッセージ込みの画像を添付してよいとのことである。今回は以下のように記入した。
画像作成・送付手順については後述する。
競走番組表への冠レース名称の由来やエピソードの掲載
当日現地で配布される競争番組表(レース一覧表)に記載するためのメッセージである。 遠隔地から観戦する場合、後日送付されてくる。
申込書では以下のように記載した。
現物は以下のようになる。
画像の作成と送付
競馬場で投影・YouTube中継で放映されるのは16:9の画像である。解像度は不明だが、フルHD(1920x1080)で作成・送付すれば十分だろう。
今回は以下のような画像を作成した。あまり文字数が多くても表示されている間に読んでもらえないので、適宜抑えるとよいだろう。
さて、画像を添付するためのメールアドレスが申込書に記載されているのだが、容量を削減してもエラーで跳ねられ、何故か受信してもらえなかった。 そのため、今回はUSBメモリを送付して対応した。もし、メールのエラーに悩まされる場合はUSBメモリという手段も(イレギュラーだと思うが)あることを覚えておいてよいだろう。ただし、USBメモリは返送してもらうと金沢競馬さんに手間をかけてしまうので、「使用後はUSBメモリを破棄して大丈夫です」といった手紙を添えておくとスムーズだろう。
レース前
確認電話
無事に申し込みが完了すると、申し込み締切日の数日後くらいに金沢競馬さんから確認の電話が入る。書類発送のスケジュールなどを教えてもらえる。 また、状況によっては何度か電話でやり取りをすることになる。
書類の発送
県営金沢競馬なので、「石川県」と書かれた封筒が届く。 今回のケース(5月2日に実施されるレース)で、4月29日に到着したので、わりと直前である(金沢競馬の方も「直前となって申し訳ないですが」とおっしゃっていた)。
内容は金沢競馬のパンフレットや関係者席の入場に必要な書類、レース実施を知らせる書類などである。
Web への掲載
およそレース2~3日前になると、競馬を取り扱った各種Web媒体にもレース名が記載される。 以下にその例を示す。迷ったら各種サイトの「出馬表」を探すとよいだろう。
ちなみに、各種データベースにもきちんと1つのレース情報として記録されるため、状況によっては天皇賞(春)など有名レースと並んで表示されることもある。
レース当日
ちなみに冠レースを実施しただけでは(よほど企画やレース名が面白いわけでない限り)そんなにバズらないので、関心を持ってくれそうな人に事前に告知しておくのがよいと思う。
予想紙の購入
予想紙(競馬新聞)とは、出走馬の過去の動向や近況、レースコンディションなどの相性を踏まえてそのレースの予想をする専門新聞である。中央競馬のものはコンビニでも販売されているので、競馬に馴染みのない人でも見たことがあるかもしれない。ここにもレース名が記載される。
地方競馬の予想紙はその地域でしか販売されていないのだが、セブンイレブンなどのオンデマンドプリントを用いることによって全国どこからでも購入できる。前日夜or当日になると販売が開始される。 金沢競馬の場合、「競馬カナザワ」「競馬ホクリク」など数種類あるので、好きなものを買ってみるとよいだろう。
YouTube 中継
金沢競馬の場合、公式チャンネルで中継が実施されている。アーカイブも残るようである。
送付した画像は以下のように表示される。
なお、以下のレース開始時の字幕画像はこちらでは作成していない。金沢競馬の担当者さんがレース名などを基に、レースごとに作っているようである(ありがたい)。
レース実施後
レース終了から1週間程度で、再び石川県からの封筒が届く。希望した場合、勝利騎手の色紙も同封されてくる。